実物に会いに行く、特別な時間
このブログでもたびたび登場するグスタフスベリの名作の数々。北欧デザインが好きな方はもちろん、あまり知らない方でも、きっとどこかでスティグ・リンドベリの作品を目にしたことがあるでしょう。ベルサの愛らしい花柄、スピサリブの上品なストライプ…。雑誌やネットで見る機会は多いけれど、実物をじっくりと鑑賞する機会はなかなかありません。
そんな貴重な機会があると知り、日本橋高島屋で開催中の「スティグ・リンドベリ展」を訪れてきました。憧れの作品たちと実際に対面したときの感動と、そこで発見した新たなリンドベリの魅力をお伝えします。
展覧会の基本情報
開催概要
- 会場:日本橋高島屋S.C. 本館8階
- 期間:2025年9月7日まで
- 料金:一般1,200円
- 所要時間:ゆっくり目に文章も全部読みながら回って約2時間くらいでした。
8階の会場に足を踏み入れると、落ち着いた照明の中にリンドベリ作品が美しく展示されています。平日の午後でしたが、北欧デザイン好きと思われる40代前後の方を中心に、幅広い年齢層の来場者がそれぞれのペースでゆっくりと作品を鑑賞していました。混雑しすぎることなく、じっくりと一つ一つの作品と向き合える、ちょうど良い空間でした。
また本筋とは違いますが、同じフロアでフランス展がやっており、いろんなお店が出店をしていました。こちらは特に何かを買わない限り入場料は無料だったので、ぜひ一緒に寄ってみてください。
実物だからこそ伝わる、作品の魅力
入口で迎えてくれる、ベルサの花園
展示会場に入ってすぐ、目に飛び込んできたのはショーケースにずらりと並んだベルサシリーズでした。普段、雑貨店や北欧ショップで見かけるプレートやカップだけでなく、ポットや蓋付きの保存容器、そして驚くほど大きなボウルまで。ベルサ柄が多様なアイテムに展開されていたことはしっていましたが、初めて実物を見てとても嬉しかったです。
実物を見ると、復刻版では感じられない葉っぱの繊細なタッチから手描きの温かみが伝わってきます。一つ一つ丁寧に描かれた証拠が、50年以上の時を経ても鮮やかに残っています。
圧巻の丸テーブル展示
会場の中央に設けられた丸テーブルには、様々な柄のカップ&ソーサーが美しく並べられていました。その中でも特に心を奪われたのが、スピサリブシリーズ。上品なストライプと繊細な縁取りが施されたカップは、見ているだけでほのかにコーヒーや紅茶の香りが漂っているような感じすらしました。
「いつかこんなセットを揃えて、ゆっくりとコーヒーを楽しみたい」そんな憧れが、心の中でどんどん膨らみます。
「どれから揃えようか、どういう順番がいいか、どの季節に何を使おうかなど」展示会に行って数日経った今も妄想が止まりません。
テーブルウェアを超えた表現力
リンドベリといえば食器のイメージが強かったのですが、展覧会では彼のアート作品やテキスタイルデザインも数多く展示されていました。陶器に描かれた抽象的な絵画、カラフルなファブリックパターン。食器デザイナーという枠を超えた、アーティストとしての才能を目の当たりにしました。
新たに知ったリンドベリの一面
音楽から始まった芸術への道
展示を見て驚いたのは、リンドベリがもともとピアニストを目指していたという事実でした。音楽的なリズム感や感性が、あの美しいパターンデザインに活かされていたのかもしれません。芸術的な感性の豊かさが、時代を超えて愛される作品を生み出す原動力だったのだと感じました。
日本との意外なつながり
展示の後半には、リンドベリが日本を訪れた後に制作した作品が並んでいました。釉薬の色味が深い藍色で、どこか日本の茶器を思わせる佇まい。フォルムにもお茶碗や急須のような優しい丸みがあり、和の要素が自然に取り入れられています。
これほど著名なデザイナーでも、異文化から積極的に学び、自身の作品に昇華していたことに感銘を受けました。北欧デザインの魅力の一つは、他文化との融合を恐れない柔軟性にあるのかもしれません。
実際、日本でも北欧食器に和食を盛り付けた写真をよく見かけますが、不思議なほど美しく調和しています。きっと北欧と日本には、「シンプルで機能的でありながら、どこか温かみのある美しさ」という共通の美意識があるのでしょう。
展覧会で感じた、デザインの奥深さ
リンドベリ作品の魅力は、表面的なかわいらしさだけではありません。フォルムの上品さと親しみやすさのバランス、機能性と装飾性の見事な調和。実物を前にすると、なぜこれらの作品が半世紀以上愛され続けているのか、その理由が自然と理解できました。
また、手描きならではの温かみや、わずかな不完全さが醸し出す人間味。現代の工業製品にはない、作り手の息遣いが感じられる贅沢さがありました。
展覧会が教えてくれたこと
会場を歩きながら、「本当に良いものを長く愛用する」という北欧的な価値観について改めて考えさせられました。今は手軽にいろいろなものが手に入りますが、高価でも本当にお気に入りの憧れの食器を少しずつ揃えていく。そんな時間のかけ方にも、独特の豊かさがあるのだと感じました。
リンドベリの作品は、単なる食器を超えて、日常を特別なものに変えてくれる魔法を持っています。毎朝のコーヒータイムが、ちょっとした儀式のような特別な時間になる。そんな暮らしへの憧れが、また一段と強くなりました。
最後に:北欧の時間を感じる午後
展覧会を後にしながら、リンドベリが込めた「暮らしへの想い」を持ち帰ることができた気がします。急がずに、じっくりと良いものと向き合う時間の大切さ。それこそが、現代の私たちが北欧から学べることなのかもしれません。
スティグ・リンドベリ展は9月7日まで開催されています。北欧デザインがお好きな方には、ぜひ足を運んでいただきたい展覧会です。きっと、あなたも新たなリンドベリの魅力を発見できるはずです。
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