オーブンから漂う優しい甘い香りに誘われて、キッチンを覗いてみると、そこには黄金色に焼き上がった大きなパンケーキが。これが今回ご紹介する「パンヌカック」です。フィンランドの家庭で愛され続ける伝統的なオーブンパンケーキで、プディングのようなもちもち食感が特徴の一品。
日本ではフライパンで焼く薄いパンケーキが一般的ですが、北欧では大きな型に生地を流し込んでオーブンでじっくりと焼き上げるスタイルが定番。秋の深まりとともに、温かいオーブンから生まれるこの素朴なお菓子で、フィンランドの家庭的な時間を味わってみませんか。
フィンランド人の心に寄り添う国民的なお菓子
パンヌカックの名前は、フィンランド語の「pannu(フライパン)」と「kakku(ケーキ)」を組み合わせた言葉。しかし実際には大きな耐熱皿やパイ皿で作ることが多く、その素朴な見た目とは裏腹に、フィンランド人にとって特別な存在です。
実は、フィンランドの学校給食では毎週木曜日にえんどう豆のスープ「ヘルネケイット」とセットで提供される定番メニュー。甘くない優しい味わいのパンヌカックが、塩気のあるスープの後の口直しとして親しまれています。また、家庭でも日曜日のブランチや、家族が集まる特別な日によく登場する、まさに「おふくろの味」的な存在なのです。
長い冬が続く北欧の国々では、家族で過ごす室内時間を豊かにする文化が根付いています。パンヌカックもその一つで、オーブンでゆっくりと焼き上げる時間そのものが、家族のコミュニケーションを育む大切なひとときなのかもしれません。
材料はシンプル、作り方はもっとシンプル
材料(直径22〜24cmの耐熱皿やパイ皿1台分)
- 薄力粉:100g
- 卵:2個
- 牛乳:500ml
- 砂糖:大さじ2
- 塩:ひとつまみ
- バター:25g
作り方
- オーブンを200℃に予熱し、耐熱皿にバターを塗っておく
- ボウルに薄力粉・塩・砂糖を入れ、牛乳を少しずつ加えながらよく混ぜる
- よく混ぜた卵を加えて、溶かしたバターを合わせる。
- 生地を耐熱皿に流し入れる
- 200℃のオーブンで40〜50分、表面がきつね色になるまで焼く
ベーキングパウダーを使わないため、普通のパンケーキよりももっちりとした食感に仕上がります。焼き上がったら大きなスプーンでざっくりと取り分けて、お皿に盛り付けてください。
作る際のポイントは、牛乳を加える時に一気に入れず、少しずつ加えてダマにならないよう気をつけること。また、オーブンの種類によって焼き時間が変わるので、表面の色を見ながら調整してくださいね。
パンヌカックをもっと楽しむコツ
素朴な魅力を引き立てる器選び
パンヌカックの素朴で温かみのある見た目には、同じく自然な風合いを持つ北欧食器がよく似合います。
おすすめの器
- アラビア(Arabia)のルスカシリーズ:落ち着いたブラウン系のグラデーションが、パンヌカックの黄金色を美しく引き立てます
- イッタラ(iittala)のティーマシリーズ:シンプルな白いプレートなら、トッピングの彩りも際立ちます
プレートは少し深めのものを選ぶと、トッピングのジャムやクリームも美しく盛り付けられます。


相性抜群のコーヒーペアリング
パンヌカック自体の甘さは控えめなので、しっかりとしたコクのある中煎りから深煎りのコーヒーがおすすめです。
トッピングにベリージャムやサワークリームを加える場合は、少し酸味のある浅煎りコーヒーも相性が良くなります!
パンヌカックで味わう北欧時間
パンヌカックを楽しむ時間は、北欧の人々が大切にする「ヒュッゲ」や「ラーゴム」といった価値観を体験する絶好の機会です。
週末の朝、オーブンにパンヌカックを入れたら、焼き上がりを待つ40〜50分の間にコーヒーを丁寧にドリップしたり、テーブルセッティングを楽しんだり。急がず、ゆっくりと時間をかけることで、日常の中に特別な時間を作り出すことができます。
お気に入りの北欧食器に温かいパンヌカックを盛り付けて、大切な人と一緒に味わう。そんなシンプルだけれど心豊かな時間こそが、北欧の人々が何世紀にもわたって大切にしてきた暮らしの知恵なのかもしれません。
家族や友人を招いてのブランチや、ひとりでゆっくりと過ごしたい休日の午後。パンヌカックがあれば、どんな時間もきっと特別なものになるはずです。パンヌカックには季節のベリージャムもよく合います。北欧風コンポートの作り方も、また別の機会にご紹介したいと思います。
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