ふわっと立ちのぼるバターの香り。
ひとくち食べると、しっとりとした生地に、シナモンとカルダモンのスパイスの香りと素朴な甘さがじんわりと広がる。
寒い朝、一息つきたいお昼に、あたたかいコーヒーと一緒に味わうと、体の奥からふわっとほどけていくような安心感――。
そんな、日常に寄り添う北欧のおやつが「カネルブッレ」、スウェーデン流のシナモンロールです。
日本でも親しまれているシナモンロールですが、実は北欧にはまったく違うスタイルと文化があります。
今回は、スウェーデンのカネルブッレ文化と、その背景にある「フィーカ(Fika)」の習慣にふれながら、甘すぎず、あたたかい北欧時間へご案内します。
北欧におけるシナモンロール文化:カネルブッレ(Kanelbulle)とは?
スウェーデン語で「カネル(Kanel)」はシナモン、「ブッレ(Bulle)」は小さなパンや菓子パンを意味します。
つまり、カネルブッレ=シナモンロールというわけです。
カネルブッレの生地は発酵させたパン生地で、シナモンだけでなくカルダモンが加えられることも多く、スパイスが豊かに香るのが特徴です。甘すぎず、素朴な味わいが魅力。ふんわりしたパンに、シナモンとバター、少しの砂糖を巻き込んだ控えめな甘さで、まさに「日常にちょうどいいおやつ」といった存在です。
スウェーデンではなんと、10月4日が「カネルブッレの日(Kanelbullens dag)」とされ、パン屋さんや家庭で焼きたてのカネルブッレを囲むのが恒例になっています。これほどまでに国民的に愛されているのは、シンプルな美味しさだけでなく、暮らしに寄り添ってきた背景があるからかもしれません。
(ホームベーカリー協会の40周年に制定されたようで、まさに国民的なパンということですね。)
シナモンロールの種類?!アメリカンスタイルとの違い
シナモンロールと聞いて思い浮かべるイメージは、国によってかなり異なります。ここで少し、北欧スタイルとアメリカンスタイルの違いを見てみましょう。


比較項目 | 北欧(カネルブッレ) | アメリカンスタイル |
---|---|---|
味のバランス | 甘さ控えめ、スパイスが香る | 甘みが強く、アイシングやグレーズがたっぷり |
生地 | パンのようにしっかりした食感 | 柔らかくリッチなバター生地 |
仕上げ | 粒砂糖や卵黄で自然なツヤ | アイシングやクリームチーズをたっぷり |
カネルブッレは、毎日のコーヒータイムにも合うような軽やかさ。日常のパンの延長線のような存在です。
一方でアメリカンスタイルは、スイーツとしての存在感が強く、食べごたえも抜群。
その違いを知って食べ比べてみると、それぞれの国の「食文化」の違いも見えてくるはずです。
フィーカとカネルブッレ:ゆったり時間の象徴
スウェーデンの暮らしには欠かせない習慣があります。それが「Fika(フィーカ)」。
フィーカとは、ただのコーヒーブレイクではありません。仕事や家事の合間に、コーヒーと甘いものを片手に一息つく、そんな心の余白のような時間のこと。家族や友人と過ごしたり、同僚との会話のきっかけにもなったりと、コミュニケーションを大切にする文化でもあります。
そしてそのフィーカに欠かせない存在が、まさにカネルブッレ。
パン屋で買ったカネルブッレと温かいコーヒーを片手に、ベンチで過ごすひととき。
あるいはサマーハウスで手作りして、家族とゆっくり味わう時間。カネルブッレは、北欧の「心地よい暮らし」そのものを体現しているように感じます。
まとめ:日常にこそ、カネルブッレのような甘さを
カネルブッレは、ただのシナモンロールではありません。
甘すぎず、素朴で、スパイスが香るその味わいは、まるで北欧の暮らしの縮図のよう。厳しい冬を乗り越えるために、人と過ごす時間を大切にし、日常の中に喜びを見つけようとする心。それを体現するような存在です。
もしまだ「カネルブッレ」を味わったことがないなら、コーヒーを淹れて、ゆっくりした時間とともに試してみてください。きっと、あなたの「おうち時間」が、少しだけ北欧に近づくはずです。
また北欧のパンといったら「カルダモンロール」も別の記事で ご紹介していますのでぜひご覧ください。
また、その他にも北欧関連のおすすめお菓子を紹介していますので併せてどうぞ。
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