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緻密な線とやさしい色彩ーエステリ・トムラが紡ぐ北欧デザイン

繊細さと力強さが共存する美|エステリ・トムラが描くフィンランドの草花

フィンランドの短い夏に咲く可憐な花々や、森にひっそりと実るベリー。
そんな自然の美しさを、繊細な線と凛としたタッチで器の上に描き続けた女性デザイナーがいます。

エステリ・トムラ(Esteri Tomula、1920-1998)。
約35年にわたってアラビア社で活躍し、ライヤ・ウオシッキネンと並び称される北欧デザインの重要人物です。

彼女の作品は一見すると華奢で可憐。けれど、よく見るとその中に静かな強さが宿っています。草花を見つめ続けた彼女だからこそ描けた、自然への深い愛情と敬意。今回は、そんなトムラの魅力をご紹介します。

目次

エステリ・トムラって、どんなデザイナー?

エステリ・トムラは1920年フィンランド生まれ、1998年に78歳で亡くなるまで、北欧デザインの発展に大きく貢献した女性デザイナーです。ヘルシンキ芸術デザイン学校でデザインや美術を学び、その後約35年という長期間にわたってアラビアで活躍しました。

実は、彼女がデザインの道に進んだのは、身体的・体力的な問題があったからだと言われています。しかし、その制約が彼女に繊細で丁寧な観察眼を与え、結果的に他の誰にも真似できない独特な表現力を育んだのかもしれません。

トムラが活躍した時代は、同じくアラビアでライヤ・ウオシッキネンも活動していた黄金期。お互いに切磋琢磨しながらパターンデザインの腕を磨き、北欧デザインの新たな可能性を切り拓いていったのです。

繊細ながら力強い、エステリ・トムラの自然への眼差し

エステリ・トムラの最大の魅力は、北欧デザインらしい自然をモチーフにした作品に宿る「繊細ながら力強い」表現力にあります。特にフィンランドの身近な草花を愛し、その美しさを器やインテリアアイテムに込めました。

彼女の描く植物は、写実的でありながらも装飾的。細部まで丁寧に観察された花びらの一枚一枚、葉の葉脈まで、すべてが愛情を込めて表現されています。それでいて、決して甘美になりすぎない凛とした美しさを保っているのです。

フィンランドの短い夏を彩る可憐な草花たちを、一年中愛でることができる器として。長く厳しい冬を乗り越える力を与えてくれるアートとして。トムラの作品には、フィンランドの人々の自然への深い愛情が込められています。

代表作品:時を超えて愛される名作たち

ボタニカ(Botanica)

トムラの代表作の一つが「ボタニカ」シリーズです。壁掛けのプレートとフラワーベースで展開されるこのシリーズは、日常使いというよりもインテリアとして楽しむアート作品的な存在。

北欧に自生する植物をモチーフにしたボタニカは、繊細でありながら力強さも併せ持つトムラらしい傑作です。過去には毎年6種類程度のデザインがリリースされていたと言われ、その時々によって作品の雰囲気に特徴がありました。細かな花を描いたもの、ベリー系の実をモチーフにしたものなど、どれもフィンランドの四季の美しさを切り取った宝石のような作品ばかりです。

クロッカス(Crocus)

そして、トムラの名前を広く知らしめた代表作が「クロッカス」シリーズです。クロッカスはアヤメ科の花で、本来は美しい紫色の花を咲かせますが、トムラの作品では色付けをせず、線だけで描かれているのが特徴的。

この潔い表現こそが、トムラの真骨頂。色彩に頼らず、線の美しさだけで花の魅力を表現する高い技術力と美的感覚が光ります。

クロッカスは3つのカラーバリエーションで展開されました:

  • 明るい白・青・緑のカラー:爽やかで明るい印象
  • 白黒:シンプルで洗練されたモノトーンの美しさ
  • グレーリム:落ち着いた上品な仕上がり

当時は2年間だけの限定販売でしたが、その美しさが忘れられず、後にイッタラによって復刻されました。現在でもよく見かけるロングセラーシリーズとして、多くの人に愛され続けています。

カルタノ(Kartano)

「カルタノ」とはフィンランド語で“農園”という意味を持つシリーズです。規則的に並んだドット、ラインが農園に並ぶ植物をを思わせるやさしい佇まいが魅力的です。

繊細な絵付けが特徴的なシリーズが多いエステリ・トムラの作品ですが、このカルタノシリーズはシンプルな模様が日常に取り入れやすい落ち着いた雰囲気となっています。

現代の暮らしに取り入れたい、トムラの世界

トムラの作品は、現代のライフスタイルにも自然と溶け込む魅力を持っています。特に「ボタニカ」シリーズは、インテリアアートとして楽しむのにぴったり。

リビングの壁面に飾れば、フィンランドの自然を感じられる癒しの空間に。ダイニングでは、食事の時間をより豊かに演出してくれます。季節ごとに飾る作品を変えることで、一年を通して北欧の四季を感じることができるでしょう。

「クロッカス」シリーズは、日常使いにも特別な日にも活躍する万能選手。どんな料理とも調和し、テーブルに上品な華やかさをもたらしてくれます。

エステリ・トムラが遺したもの

トムラの作品は、「自然への愛情を形にする」ということの素晴らしさを私たちに教えてくれます。身近な草花に目を向け、その美しさを丁寧に観察し、愛情を込めて表現する。そんなシンプルだけれど大切なことを、彼女の器は静かに語りかけているのです。

また、色彩に頼らない線の美しさや、繊細さと力強さを両立させる表現力は、多くの後進デザイナーたちに影響を与え続けています。フィンランドの自然への深い愛情と、それを表現する確かな技術。この両方を兼ね備えたトムラの作品は、時代を超えた普遍的な美しさを持っているのです。

まとめ:トムラと過ごす、自然に寄り添う暮らし

エステリ・トムラの器は、普段見過ごしてしまう小さな草花の美しさや、四季の移ろいの尊さをそっと教えてくれます。

一枚の器を手に取ることは、フィンランドの自然と静かに繋がること。彼女が愛した草花の物語を日常に迎え入れることでもあります。

北欧の自然や暮らしに触れる入り口として、あなたもトムラの世界を暮らしに取り入れてみませんか?きっと、日々の時間がより豊かでやさしいものに変わるはずです。

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この記事を書いた人

こんにちは、よしだです。

コーヒーとお菓子、そして北欧の暮らしが好きで、このブログを始めました。
本業ではコーヒーに携わりながら、少しでも多くの人にコーヒーのある暮らしを満喫して欲しいと奮闘しています。

このブログでは、もうすこし視野を広げて
「日常のなかで楽しめる、小さなご褒美」のような北欧時間をテーマに、
・コーヒーのある暮らし
・好きな器やカップ
・北欧の文化
について自分の勉強も兼ねて紹介しています。

同じように、ちょっと丁寧に暮らしたいなと思っている方に、
少しでも参考になることがあれば嬉しいです。

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