リビングにちょこんと佇む、鮮やかな小さな馬。
それがいつの間にか、あなたの暮らしにやさしい物語を届けてくれるかもしれません。
北欧スウェーデンのダーラナ地方で生まれた、鮮やかな赤や青の彩色が施された木彫りの馬、「ダーラナホース」。 素朴で愛らしいその姿は、今やスウェーデンを代表する民芸品として世界中で愛されていますが、ただのインテリアなどではなく、厳しい冬を越え、豊かな自然と共に生きてきた人々の歴史と温かい心が込められています。
厳しい冬が育んだ「馬」への感謝:ダーラナホースの起源
ダーラナホースの歴史は、17世紀にまで遡ると言われています。 日照時間が短い冬に、早く仕事を終えた木こりが子供のためにおもちゃとして彫って作ったのがダーラナホースの起源です。1800年頃にダーラナ地方が経済的に貧しくなってきた際に、ダーラナホースは物々交換の対象となり、そこから伝統工芸品として根付くようになりました。
なぜ、馬の見た目をしているのか、、、 それは馬が暮らしに欠かせない大切な存在だったからです。
はじめは子供用のおもちゃだったダーラナホースは、ダーラナの人々の気持ちも暮らしも支えるものとして大切にされるようになったんですね。
その後、今では色々な色、装飾が施されるようになり、世界中に広まっていきました。
色とりどり:ダーラナホースの種類
ダーラナホースといえば、鮮やかな「赤」が最も有名ですが、実は様々な色やデザインのものが存在します。
- 伝統的な赤: 最も一般的なダーラナホースの色で、幸福や健康を象徴すると言われています。この赤は、元々銅の鉱物から作られる顔料を用いていた名残ともされています。
- 幸福を呼ぶ青: 赤に次いで人気のある色で、誠実さや希望を表すとされています。
- 純粋な白: 結婚祝いや新築祝いなど、新たな門出を祝う贈り物として選ばれることもあります。
- シックな黒: 落ち着いた雰囲気で、インテリアに馴染みやすいと人気です。
- 自然を表現する緑: 豊かな自然を象徴し、癒しや安らぎをもたらすと言われています。
これらの基本的な色の他にも、近年では現代的なデザインや、様々なアーティストとのコラボレーションによる限定品など、多種多様なダーラナホースが生まれています。また、サイズも手のひらに乗る小さなものから、人の背丈ほどもある大きなものまで幅広く作られています。
スウェーデン人の心に息づく「伝統」と「誇り」:ダーラナホースが持つ意味
現代のスウェーデン人にとって、ダーラナホースは単なる観光土産品以上の存在です。彼らの生活の中に、深く根ざした「伝統」と「誇り」の象徴として位置づけられています。
- 郷土愛とアイデンティティの象徴: ダーラナホースは、ダーラナ地方のシンボルであるだけでなく、スウェーデン全体の民芸品として、国民の間に強い郷土愛とアイデンティティを育んでいます。家庭のリビングや窓辺に飾られ、日常の中に溶け込んでいます。
- 幸運のお守り: その愛らしい姿と、古くからの言い伝えから、ダーラナホースは「幸運を運ぶ」「家を守る」お守りとして親しまれています。新築祝いや結婚祝い、出産祝いなど、人生の節目のお祝いとして贈られることも多く、受け取った人々に温かい気持ちを届けています。
- 手仕事の温かさへの敬意: 機械生産が主流の現代において、一つ一つ手作業で丁寧に作られるダーラナホースは、職人の技と手仕事の温かさを伝える貴重な存在です。その素朴な風合いは、現代社会で忘れられがちな心のゆとりや、自然とのつながりを思い出させてくれます。
- 子供たちへの文化の継承: ダーラナホースは、スウェーデンの子供たちにとっても身近な存在です。幼い頃からダーラナホースに触れることで、国の歴史や文化、手仕事の価値を自然と学んでいきます。
厳しい冬を乗り越え、人々の暮らしを支えてきた馬への感謝の気持ちから生まれたダーラナホース。その温かい木のぬくもりと、素朴ながらも力強い存在感は、国境を越えて多くの人々に幸せを運び続けています。スウェーデンを訪れた際には、ぜひこの愛らしい木彫りの馬に触れて、その背景にある温かい物語を感じてみてください。
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