暮らしの中に“アート”を宿す器との出会い
北欧デザインといえば、「シンプルさ」や「機能美」がよく知られています。
実際、多くの製品は実用性を重視し、無駄のない美しさで私たちの暮らしに馴染んでいます。私の感覚では、現在でも広く知られているデザイナーにはシンプル系統の方が多い印象があります。
そんな中で、少し異なる方向性を歩んだデザイナーがいます。
フィンランドの陶芸家、ビルガー・カイピアイネン(Birger Kaipiainen) です。
繊細で装飾的なデザイン、自然や物語を感じさせる独自の世界観。
カイピアイネンの作品は、日常の中に個性と彩りをもたらしてくれます。
この記事では、そんな彼の人物像と代表作についてご紹介します。
カイピアイネンってどんな人?|人物と背景
カイピアイネンは1915年、フィンランドに生まれ、約50年にわたりアラビア社やロールストランドでデザイナーとして活躍しました。
戦後のフィンランドでは、「シンプルで実用的なデザイン」が主流になる中、彼は一貫して詩的で装飾的な作風を追求しました。
言い換えれば、大量生産向けのシンプルな食器ではなく、芸術性を重視したスタイルを貫いたのです。
病弱な身体を抱えていたこともあり、兵役を免除されたことで制作活動を継続できたとも言われています。
「装飾は罪ではない」という信念のもと、彼は幻想的で独創的なデザインを数多く残しました。
代表作紹介|日常にとけ込む「詩のような器」
【Paratiisi(パラティッシ)】
カイピアイネンを象徴する代表作といえば、このパラティッシ。
果実や花が咲き誇るデザインは、生命力にあふれながらもどこか気品があります。
自然をモチーフにした食器は他にもありますが、Paratiisiの力強い構成と色使いは、唯一無二の存在感を放っています。
カラフルなバージョンに加えて、落ち着いたモノトーン版も展開されており、
アートとしての美しさと日常使いのバランスが魅力です。
おすすめの使い方: おもてなしの主役皿に。大きめの26cmプレートがおすすめです!
【Apila(アピラ)】
クローバーをモチーフにしたデザインと、やさしいグリーンが印象的なシリーズ。
自然とのつながりや、幸運の象徴としても親しまれるクローバーを用いたデザインは、静かな癒しを食卓に添えてくれます。
柔らかいトーンのApilaは、他の北欧食器と組み合わせても自然に馴染むのが魅力です。
ビンテージ物になるので、ぜひ市場やショップで見かけた際は手にとって見てみてください。
おすすめの使い方: 和食やお茶時間、軽食に。
【Sunnuntai(スンヌンタイ)】
“日曜日”を意味するシリーズ名が表すように、Sunnuntaiには温かみとリラックス感があります。
明るいイエローと手描き風の線画が特徴で、レトロな雰囲気がありながら、現代の食卓にも自然と馴染みます。
製造時期が短く希少でしたが、近年復刻版が登場し、入手しやすくなりました。
(復刻の背景には、Paratiisi発売50周年を記念する意味合いもあったそうです)
おすすめの使い方: 日曜日のおやつやブランチに。
個人的には小さめのプレートや、ボウルのほうがバランス良く感じてオススメです。
カイピアイネン作品の魅力|「実用」より「感性」で選ぶ器
カイピアイネンの器は、道具であると同時に“アートピース”でもあります。
棚に飾るだけでも目を引き、手に取るたびに心が動かされる。そんな存在です。
彼の作品は「日々を整えるための道具」ではなく、
「暮らしを彩り、感性を満たすための選択肢」として、特別な魅力を放っています。
北欧デザインの中でも、感性に訴えかける個性的なスタイルとして、多くの人に支持されています。
入手方法とおすすめの「はじめの一皿」
- Paratiisi や Sunnuntai は、現在イッタラブランドから現行品が販売されています。
楽天でも販売しているので、よかったら御覧ください。 - Apila は復刻や限定生産のため、販売時期によっては入手困難なことも。
ただ、セレクトショップやビンテージショップでは見かけることも度々です。
もし、ビビッときたら迎えてみてはいかがでしょうか?
絵柄が特徴的なので、「プレート」タイプが個人的にはオススメです!
テーブルに並べたときの特別感がとてもお気に入りです。(が使いすぎると特別感が薄れてしますので気をつけてます笑)
「好き」という気持ちに正直になれる器
北欧デザインは、シンプルで実用的なものだけではありません。
カイピアイネンのように、装飾的で個性豊かな器にも、北欧らしさが宿っています。
自分の「好き」という気持ちを大切にして、暮らしの中に取り入れてみる。そんな選び方ができるのも、彼の作品の魅力です。
カイピアイネンの器は、日常のひとときに彩りを添えたいとき、そっと背中を押してくれる存在になるはずです。
器のひとつひとつに込められた想いを知ると、不思議と暮らしの風景まで変わって見える気がします。
このブログでは、そんな“背景を感じる器たち”をいくつかご紹介しています。
よかったら、気になるデザイナーやシリーズも、ぜひのぞいてみてくださいね。


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